親権と監護者・監護権
Q1 離婚をしたいのですが,親権者はどのような手続によって決まるのですか。
A 未成年の子どもがいる夫婦が離婚をする際には,必ず子どもの親権者を定めなければいけません。
親権者を決めるための手続としては,
- 裁判所を利用せずに当事者双方が合意で決める方法(弁護士が代理人として相手と話合いをすることもできます。)のほか,
- 家庭裁判所に夫婦関係調整の調停を申し立てて,調停委員を介して話し合って決めることもできます。
- 調停でも話し合いがつかなかった場合には,裁判官が決めることになります(家事審判,訴訟)。
Q2 裁判所によって親権者が指定される場合,どのような点が重視されるのですか。
A 裁判所による親権者の指定は,様々な判断要素の下に行われます。具体的には,父母双方の事情(監護に関する意欲と能力,経済的・精神的家庭環境,居住・教育環境,子に対する愛情の程度,親族等による援助の可能性など)や,子の事情(年齢,性別,兄弟姉妹関係,従来の環境への適応状況,子自身の意思など)を総合考慮して判断すべきとされています。
Q3 妻との離婚を考えていますが,妻は私が子供を育てることに反対していないものの,親権は譲らないと言っています。親権者ではない私が子供を育てることは可能なのでしょうか。
A 原則として,親権者が未成年子に対する監護権を有しますが(民法820条),親権者とは別に監護権者を定めることが可能な場合があります。
監護権者は,父母が離婚をする際に,協議によって定めることができ(民法766条1項),協議が調わないとき又は協議することができないときは,家庭裁判所が定めることができます(同条2項)。実務上,調停や審判申立てにより,監護権者を定めることも認められています。
もっとも,親権者と監護権者を別個にすることは必ずしも子の福祉にとって好ましいとは限りません。そのため,親権者と監護権者の分離が認められるのは,監護権者に財産管理を委ねることが適当でない場合など,分離させる積極的な必要性が認められる場合が多いと考えられます。